日刊工業新聞社の月刊誌「工場管理」2006年1月号に、株式会社船井総合研究所 溝端斉治氏による特別企画「OHSAS運用による窓ガラスの安全対策」が掲載され、コラボは地震被害の認識状況に関するコメントを提供。また記事作成におけるアドバイザーとして溝端氏に協力させていただきました。出版社の許諾を得て、記事の抜粋をご紹介いたします。
OHSAS運用による窓ガラスの安全対策
大規模な地震とその災害の悲惨さを伝えるニュースが相変わらず後を絶たない。発生原理を考えてみれば、地震はいつ起こってもおかしくないが、緊急性が低いといったん判断すると、自然と頭の引き出しの奥に押し込んでしまうのが人間である。しかし、地震のニュースのたびにその災害の甚大さが頭の中で思い起こされ、「ウチの耐震対策は万全なのか」と騒ぎ出す。つまり耐震対策というものは、きっかけがあって初めて検討される性質のものであることがわかる。
ここで、工場や事業所で耐震対策を能動的に考えるきっかけとなり得るひとつが、OHSAS18001(労働安全衛生マネジメントシステム)などの安全活動であろう。ここではOHSAS18001の運用と、工場として取り組む耐震対策について、2005年3月の福岡西方沖地震を契機に注目が高まった、窓ガラスの耐震対策に特に焦点をあてて論じる。
工場における耐震対策のモレ
さて、福岡県西方沖地震(2005年3月20日、死者1名、負傷者1000名以上)の発生を契機として、官公庁や一般企業において、「自社建造物の窓ガラス耐震対策」に対する注目が高まっているようである。先に述べたように、きっかけがないと地震自体へ意識が向けられることは少ないのだが、建築機能材販売のコラボ社では、海外での地震発生のニュースや過去の地震関連の記事が新聞掲載されると、その日の同社HPへのアクセス数が20〜30倍アップし、耐震対策用窓ガラスフィルムなどの建築機能材に関する問合せが一時的に急増する、という。
まだ記憶に新しい1995年の阪神大震災で、巨大なビルが倒壊した映像を覚えておられる方も多いと思うが、あの阪神大震災を契機に、構造的に耐震性能の高い建造物の割合が増えた結果、福岡西方沖地震ではビル骨格の崩壊・落下は減少した(阪神大震災に比べて震度が少し小さめだったことも幸いした)。しかし一方で、阪神大震災では気づかなかった、もっと身近な被害が露呈した。すなわち、割れた窓ガラスの飛散である。福岡地震での被害は窓ガラスに集中し、市街地にあるビルの窓ガラスが割れて、あたり一面に飛び散った(写真1)。
実は1978年の宮城県沖地震でも、割れたガラスの落下で多数の死傷者が出ていたが、2005年に福岡県西方沖地震が起きるまで、窓ガラスに対する耐震意識はそれ程の高まりを見せなかった。しかし、ガラスは建造物を構成する部材の中で最も脆性が高い、つまり、一定以上の応力による変形に最も弱く、地震という巨大な力がかかれば当然、真っ先に破壊する。地震により地面が動くことによって地面に発生した加速度が、地面より上にある構造物の質量に応じて力として作用し、構造物に曲げや剪断などの変形、いわゆる層間変位応力がかかる。そうすると、嵌め込み部分の強度が比較的弱い旧建造物の窓ガラスは、歪みにより割れ、一瞬にして周辺に降り注ぐのである。(中略)
窓ガラスの耐震対策に対するパラダイムシフト
ところで、実際に事業所の窓ガラスに破損飛散対策を検討する段になると、これまで最もネックになっていたのはコストである。つまり、「めったに起きない地震に対して、わざわざ窓ガラスを耐震仕様に変えるのは、数々の安全対策の中でもかなり優先度が低い」という認識である。このことは至極当然のように思える。OHSAS18001では、「リスク要因を抽出し、リスクの高いものから順に対策を打つこと」を基本事項としてPDCAサイクルを回していくが、このような活動も企業活動の一部であってコストはかかる。「めったに起こらない地震(低リスク)に対して、窓ガラスを耐震仕様に取り替える(高コスト)」のは、抽出したリスク要因の中に代替案もあるうちで、企業活動として「費用対効果が低い」と考えていたのであろう。
しかし、私たちはこの認識を変えなければならない。
まず低リスクという認識について、その間違いを気づかせてくれたのが、被害が窓ガラスに集中した福岡西方沖地震なのである。先ほど述べたように耐震対策に漏れがある中で、福岡地震で窓ガラスに被害が集中したことは、「窓ガラスには重大なリスクが潜んでいる」ことを私たちに気づかせてくれた。
続いて、高コストの認識については、耐震ガラスに取り替えるとなれば、ガラス代に加えて施工・工事代もかかり、実際にはコストが高いという印象かもしれない。しかし、例えば耐震対策用窓ガラスフィルム等を使う対策施工方法なら、当然ながらガラス購入が不要であり、低コストでできる対策法なのである。(中略)
実際にどうやって対策していくか
それでは、実際のOHSAS18001活動として、どのように落とし込んでいけば良いのか。以下に具体的な考え方を提案する。
まず、OHSAS18001の活動において最も重要かつ時間を要する「4.3.1. 危険源の特定・リスクアセスメント・リスク管理の計画」において、「定常時」「非定常時」に加えて「緊急時」でのリスクアセスメントを実施する。「緊急時」というくくりでアセスメントを行えば、地震や台風などの天災や何らかの事故が起こった時に想定される、労働者への危険を抽出できる。(中略)
当然、リスクレベルが高いと判断されれば、そのリスク要因に対しては、優先的にリスクレベルを低減することになる。比較的予算をかけることができるのであれば、費用と手間はある程度かかるが窓自体を網入りガラスにするなどの根本対策も可能である。一方、限られた予算での対策ということであれば、別に有効な手段を考えねばならない。低コストでの有効なリスク改善活動という意味では、耐震対策用窓ガラスフィルムの使用などは作業も簡単で、工場活動への影響も軽微である。(中略)
OHSASの意義は、予防的見地から危険箇所をすべて洗い出すことであるから、重要なのは「4.3.1」において情報収集の対象範囲をどこに設定するか、である。
OHSASをまだ導入していない事業所であったとしても、本稿をお読みの読者には積極的な耐震対策の必要性を感じていただけることと思う。また本稿の論旨からすれば余談にはなるが、耐震対策用窓ガラスフィルムの機能には、構造保持(飛散防止)だけでなく、紫外線カット(日焼け防止)や特定波長領域カット(虫の走光性を利用した防虫効果)、熱貫流率の低さ(断熱効果)等の付加価値もある。これはOHSAS18001に加え、ISO14001やHACCPの観点でも効果を発揮するという意味では、耐震対策用窓ガラスフィルムは多機能を備えた建築機能材であり、導入の付加価値が高い構造材であると言える。(以下略)
コラボではガラス飛散を防止するガラスフィルム<スコッチティント/Scotchtint 飛散防止>や、取り付けるだけでオフィスの照度をアップし、安全で快適な環境を作る<高機能反射板ニューラックス/Newlux>などの製品で、OHSAS推進を応援します。