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ガラス破壊公開実験レポート(2)−>講演「都市型大地震におけるガラス被害を考える」


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都市型大地震におけるガラス被害を考える 熊本大学工学部環境システム工学科 松田泰治教授

地震工学、都市防災、リスクマネジメントをキーワードに建設工学、自然災害工学などを専門に熊本大学で研究されている松田泰治教授に、2005年9月21日に福岡県国際センターで開かれたガラス破壊公開実験にお越しいただきました。2005年3月2日に起きました福岡西方沖地震土木学科会調査団のメンバーとして、市街地における被害集中地域調査を担当なさっていた松田教授に「福岡西方沖地震における建物被害について」ご講演いただきました。

熊本大学工学部環境システム工学科松田泰治教授

地震によるガラスの被害が注目されるようになったのは、1978年に起きました2回の宮城県沖地震がきっかけです。2月に起きた1回目の大地震では、主要構造具材や家具などの被害は軽微だったにもかかわらず、多くのガラス破片が路上に落下しました。その落下した窓ガラスのほとんどに、硬化性のパテが使われていたということです。

次に6月に起きた2回目の大地震では死者16名、重軽傷者が1万119名と、1回目の地震を上回る大変な被害を記録しました。その中でガラス破片や落下物などでケガを負った人は市内で1万名以上おられたといいます。

この2つの大地震を機に、当時の建設省(現・国土交通省)が耐震指定の告示の改正を実施し、屋外に面した壁のガラス施工の場合は、硬化性シーリング材の使用禁止を正式に決めました。さらに1981年に施行された新耐震法では、震度6以上の大地震に対しても十分な粘りを与えて安全を確保していくための設計を決めました。

2005年3月に発生した福岡西方沖地震の被害は、福岡市を中心に玄海島、志賀島などで大きな被害を記録しました。その中で、どのエリアでもそうでしたが、最近建てられたと思われる家屋の被害は軽微だったことが印象的です。

そもそも、地震によって構造物に生じる揺れは、自動車でいう急発進・急停車でシートに押しつけられたり、前のめりになったりする、あの力のようなものです。地面が動くことによって地面に加速度が発生して、その加速度が地面より上にある構造物の質量に応じて力として作用し、構造物に曲げや剪断といった変形を起こす。こういった変形が、最終的に窓ガラスに影響を与えてしまいます。そのため壁や窓枠と一緒に変形していったときに、弾性変形する量が非常に少ないガラスから割れてしまうのです。

硬化性のパテは古くなると硬化してガラスを固定してしまいます。これがもし硬化しないタイプのパテでしたら、パテの部分が変形を吸収してくれますので、ガラスは割れずに助かるというわけです。

ガラスの飛散対策としてはどういう方法があるのかといいますと、一番よく実施されている方法としては、飛散防止用フィルムを貼って対応することです。ほかにはガラスそのものを網入りガラスや合わせガラスに交換する方法や、もしくは枠ごと古いものを外して、新しくて安全なものに交換してしまう方法もあります。

今回の福岡西方沖地震では、ガラスなどによる被害の問題のほかにも、エレベーターが緊急停止したことによって病院機能が麻痺したことや閉じこめの問題など、都市型の地震ならではのさまざまな問題がいろいろと浮き彫りになりました。このような教訓を基に、キ市の防災機能を高めていく、ということを我々はやっていかなければならないと考えています。