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建築家が見る、ガラス飛散の実態と脅威への対策とは 「国土交通省の調査から明らかになった窓用フィルムの必要性」 建築家 齊藤誉征

2005年3月20日午前10時53分頃発生した福岡県西方沖地震において、繁華街におけるガラスの落下によるケガといった都市型の地震による危険性が再度クローズアップされることとなりました。

特に「福岡ビル」では、約1,600枚のガラスのうち、444枚が割れ、その破片が歩道に降り注ぎ、問題になりました。福岡ビルは昭和36年築の古い建物であり、当時施工された「硬化性のシーリング材を用いたガラス」が建物の動きに追随できず破損したようです。(国土交通省調査)

ガラス飛散の場合、屋内においては死亡する危険性は低いものの、ガラスを踏んでしまうことにより多くの負傷者を発生させる危険性が極めて高く、昨今のガラスパーティションを多用したようなオフィスではその対策は重要です。また、オフィス街や繁華街などの屋外を歩行している人にガラスが飛散することで多くの負傷者を発生させる危険性があります。また、ガラスの飛散距離は建物高さの半分程度の範囲といわれており、高層建物ほど、飛散範囲は広がり被害が拡大する可能性があることから、特に高層建物におけるガラスの飛散防止対策の促進は重要です。

福岡県西方沖地震を受け、国土交通省住宅局建築指導課が「既存建築物における窓ガラスの地震対策について」(通知)を出しましたが、これは、宮城県沖地震で「パテどめ、はめごろし窓」の窓ガラスが大量に破損したことを受け、1978年8月に出された「ガラス窓の調査及び改修指導について」(通知)による窓ガラスの改修が徹底されていない建物が未だに数多く存在していることを物語っています。基準を満たさない古い窓は全体の「数%程度」とみられているものの正確なデータはないため、国交省では現在、全国の自治体に調査を要請しています。

東海地震、東南海・南海地震といった大規模地震が今世紀前半にも発生することが予測されており、窓ガラス・室内パーテーションガラス等の防災対策の強化は急務です。

※福岡ビルでも、前述の国土交通省の通知基準を満たした新しい窓ガラス約500枚にほとんど被害はなかったことを受け、カーテンウォールの更新や飛散防止フィルムの貼付を実施する予定です。

環境面からも望まれる窓用フィルムの普及

1990年代半ばより大面積を透明ガラスで覆い尽くした建物が街に目立つようになりました。そのきっかけはサッシュレスのDPG工法にあると言われています。当時の設計者はより透明であることを競っていたように思われます。その後現在においても設計者のガラスへの関心は高いものの、その意匠的な興味の中心は単に透明であることではなく、日本的な半透明性であったり、見え方の変化であったり、色相の重なり具合といった方向にシフトしてきました。また、エコロジカルな要望から透明性を保ちながら、熱負荷を下げるような材料、システムへの関心も高まっています。

飛散防止フィルムには、紫外線のカットといった「機能性」や、表面プリントによる「意匠性」といったものを複合させることが出来ます。防災対策と同時に、意匠性を見直すこともビルの価値を高めることにおいて非常に重要であると考えます。

齊藤誉征アトリエ代表 齊藤 誉征

齊藤誉征アトリエ代表 齊藤 誉征

<経歴>
  • 1974 兵庫県生まれ
  • 1999 大阪大学大学院 工学研究科建築工学専攻 修士号取得
  • 1999 建築設計事務所 阿部仁史アトリエ(〜2003)
  • 2001 設計チーム『T+H』共同主催
  • 2003〜現在 建築設計事務所 齊藤誉征アトリエ設立
  • 2005〜現在 (株)リアルワークス
<主要作品>
  • 1999 n-house新築工事
  • 2000 レストラン・バー neige lune fluer内装工事
  • 2001 関井産婦人科新築工事
  • 2002 松田歯科医院新築工事
        ソニー本社ビル計画(鹿島建設と協同)
  • 2003 山川邸新築工事
        藤原屋F-townビル新築工事
        パチンコタイガー松森店改装工事
    〜以上、阿部仁史アトリエでの業務
  • 2004 amo dental clinic(天羽歯科クリニック)
  • 2005 svago hair(スヴァーゴ・ヘアー)
        Tクリニック(耳鼻咽喉科:現在設計中)
        西大路五条PJ(区分所有マンションの改装計画)
    〜以上、齊藤誉征アトリエでの業務
<賞歴>
  • 1996 建築学会コンペ「空間のリサイクル」入賞
  • 1997 建築学生・設計大賞'97「装飾された家」優秀賞
  • 1997 建築学会コンペ「21世紀の学校」入賞
  • 2004 JCDデザイン賞2004「amo dental clinic」入選(「年鑑日本の空間デザイン2005」(六耀社刊)掲載)
■業務内容
  • 建築設計・監理
  • 建築企画、コンセプトメーキング
  • 住宅・店舗のリフォーム、リノベーション
  • CIデザイン
  • 不動産投資ファンドアドバイザー
■TEL/FAX
■HP
■宝塚アトリエ
宝塚市今里町19-1
■京都アトリエ
京都市中京区蛸薬師東洞院東入る泉正寺町318-401
■スタッフ
齊藤誉征、齊藤加奈子